Insights
#004

SESSION 04
ブランディングデザインのフレームワーク
「PPOF」の入門的ワークショップ

2020.12.11

私たちアート&サイエンスのブランディング・メソッドである5ブランディング・ソリューションズ(5 Branding Solutions 以下5BS)は実際のプロジェクトでは数ヶ月かけて実行されます。今回のセッションではその一部をあえてスプリント形式(短時間で全力で駆け抜ける)で実行してみました。

「ブランドビジョン策定」のための「PPOFをつかったストーリー化」

──今回はアート&サイエンスの独自のブランディング・コンサルティング・メソッドである5BSをできるだけカジュアルにクイックに使ってシミュレーションするというワークショップを行います。すべての工程を実践するには時間が足りないので「ブランドビジョン策定」フェーズの「PPOFをつかったストーリー化」というワークを合計6時間程度でスピーディーにシミュレーションしてみます。通常は、この「PPOF」のワークに2、3日費やしますので、かなり極端な圧縮になりますが、スプリント形式で実行してみることで、このメソッドを別の視点で体験できるのではないかと思っています。

齋藤(ブランディング・ストラテジスト):5BSの「ブランドビジョン策定」「タッチポイント設計」「UXデザイン」は、実際のクライアント企業のブランディング・プロジェクトでは、ワークショップを中心にしてじっくりと検討するものなので、その一部でもスプリント形式で実行してみると一体どんな変化が起こるのか楽しみです。
岩本(ブランディング・スタイリスト):ブランディング・プロジェクトの最上流フェーズである「ブランドビジョン策定」には一定の時間をかけることもやはり重要だと思うのですが、その期間内に様々な不確定要素や条件制約が追加で発生してしまい(それが新たな気付きになることもありますが)、時間と共に勢いや確信が揺らいでしまうことも起こりがちです。短時間で駆け抜けてみて、この課題を改善するヒントが見つかればいいですね。
栗林:デザインのアイデア出しやコンセプトメイキングといったクリエイティブの着想にも5BSや「ブランドビジョン策定」のメソッドが気軽に活用できれば良いと思っていたので、サマリー版としてのシミュレーションで何か手応えが掴めると良いと思います。

──今回は「カフェ」事業のブランディングというテーマを設定します。カフェだとみなさんが想像しやすいですからね。ジャンルはいわゆる「雑貨カフェ」としましょう。コンセプトは『ヨーロッパの「ノミの市」を再現した世界観で、古道具や古本などの雑多なモノが展示・販売されている新しいタイプの雑貨カフェ』。個人店ではなくあくまでチェーン店展開を計画中の新規事業開発プロジェクトです。カフェ市場は大小たくさんのプレイヤーがひしめく競争の厳しい業界ですが、ブックカフェや雑貨カフェなど個性的なお店がまだまだ続々と生まれていますし、そういったコンセプトでしっかりと仕組み化されたビジネス展開をしている企業はまだないと思います。スターバックス系、喫茶店系、ファストフード系、ライフスタイル系など業態は様々ありますが、あらたな業態を生み出す新規事業開発のつもりで検討していきたいと思います。前提となる背景はそんなところで良いでしょう。
では早速、「PPOF」から始めましょう。

「PPOF」というフレームで「人間本来にとっての価値」を考える

——「PPOF」というのはPresent/Past/On going/Futureの頭文字です。<現在-過去-進行中の現在-未来>の順序で対象テーマをストーリー化します。これは「人間本来にとっての価値」を考えるためのフレームワークです。今回は、「カフェとはそもそも人間にとってどんな存在で、いまどんな存在になっており、これからどんな存在になっていくのか」が「問い」になります。

「人間本来にとっての価値」を考える「PPOF」のフレーム

【カフェに行くとき人間には何が起こっているのか?】
Present/Past/On going/Future
【カフェに行く人間とカフェに行く人間の間には何が起こっているのか?】
Present/Past/On going/Future
【カフェに行く人間たちの社会では何が起こっているのか?】
Present/Past/On going/Future


「PPOF」では、「人間」「人間と人間」「人間と社会」という三つの視座でテーマを考察します。重要なのは「カフェ」と「人間」について、それこそ人類史的な視点で起源までさかのぼって考えること。「そもそもなぜ人間はカフェに行くのか?」そこから考えます。「カフェの起源と言えるものは何か?」「人間がカフェに行くとき、人間は何をしていることになるのか?」こういったところから議論を展開して欲しいと思います。
「PPOF」には本来、文化人類学や歴史学や文学や哲学などの専門家を交えた多様なメンバーによるワークショップが必要なのですが、今回はスプリント形式で行うので、専門家を交えずあくまでいま現在みなさんの手元にある知識や情報だけでワークしてみましょう。

(以下のようなキーワードがでる)
<カフェと人間の起源>
休憩する/話す/情報交換する/コーヒーを飲む場所/イスラム圏発祥/オスマントルコ帝国/ウィーン/フランス/イタリア/旅の休憩場所/茶屋/セレモニー/密談/集会/社交場/アジト/思想家/革命家/芸術家 など

<カフェに行く人間同士の関係>
習慣/ただ集まる/長々と喋る/たわいもない会話/会議/議論/シラフで集まる/日によってメンバーが替わる/アイデアを発想しにいく など

<カフェに行く人々の社会>
変革が生まれる/政治・思想・芸術の先鋭化/ゆっくりのんびり/コミュニティ/一日のリズム/情報に価値がある/コミュニケーションが重要視されてる など

齋藤:そもそも、喉の乾きを癒したり休憩したりするだけなら別の手段もあります。また、たとえ喉の乾きを癒したり休憩したりする場所としてつくられたとしても、たとえば「井戸端」のように、必ずその場所はそれ以上に何か別の役割を持つ場所に発展して「カフェ化」すると言ってもいい。
岩本:一人で本を読んだり考えたりするなら家でもいいわけだけど、それでもやはり外に出てカフェに行ったりする。誰かと会って話すのも家や職場や公園や色んな場所があるけど、やはりカフェに行く。そう考えると、まずなによりカフェは居心地が良くホスピタリティがある空間で、そのため思考やコミュニケーションに集中できる場所だということになりますよね。
齋藤:確かに。お互いに負担もかけないですし。でも集中できるのは身体だけですよね。むしろ思考は分散されませんか? 見慣れないモノ、店員さんとの受け答え、他人の目、声や音など、カフェに行くとむしろノイズが多くなる。
栗林:さっきのキーワードだと、あえて「密談」をするというか、会話や姿が紛れるというところにもカフェのニーズがありましたよね。
岩本:なるほど「紛れに行ってる」と。
齋藤:でもどうして現代において、別に何か隠すべきことがなくても「紛れる」必要があるんですかね。

人間はなぜカフェに行くのか?を考える

——たとえば、物も色も音も何もない「まっさらな空間」があったとしたら、そこで人間は物事を思考したり、相手と自然にコミュニケーションしたりできるでしょうか? おそらくあまり快適にはできないですよね。関係のない物音が聞こえたり、相手から目を逸らしたり、周囲をよそ見したり、何かを飲んだり、他人が気になったり、うわの空になったり、適当な相づちを打ったり、途中で席を立ったり、時々聞こえづらかったり、そういったいわば「ノイズ」が、実は人間の思考やコミュニケーションを活発にさせているという視点はいかがでしょうか。

齋藤:それは明らかにありますね。セレンディピティという概念にも近いかもしれません。
岩本:「しなくてもいい」という選択肢があるほうが、仕事がはかどったりコミュニケーションが楽しくなるということはありますね。
栗林:でも、いま現代において「ノイズ」はネット空間に溢れていますよね。SNSをはじめとして。でもカフェに行くのはそこから逃れるような気持ちの時もあると思うんです。これはどう考えたら良いでしょうか?
齋藤:カフェはその意味で、心地良く安心感のある「質の高いノイズ」をプロデュースしてくれるということかな。
岩本:やっぱりまさに「フィジカル」であるということがそもそも明らかな違いですよね。身体性があるというか。五感で空間全体から刺激を受けるというか。リアルに目にするものや触れるものから受ける影響は「デジタル」の情報とはまるで違う。
栗林:確かに、仮にSNSで「益子焼」の情報を見るより、カフェで「益子焼」のカップに触れる方が、ノイズとしての深さや質が違う。
岩本:それから、SNSでの情報は「プライベート」に消費しているけど、カフェにある体験は「パブリック」に消費している気がする。「ノイズ」としての大きな違いになりそう。
栗林:「パブリックに消費している」からなのか、カフェでの情報接触はSNSより「手離れ」がいい感じがする。SNSでの情報接触はプライベートなだけに、どうしてもまとわりついてくる感じがあります。

人間がカフェに行くとき一体何が起こっているのか?を考える

——つまり、カフェは「公・私のドアを半開きにする」ような場所であると言えそうですね。「質の高いノイズ」空間 としての適温を保つためには、どうやら「ある程度私的で、ある程度公的」である必要がある。公的というのは社会性があるということです。思考やコミュニケーションの活性化のために、「自分ゴトと他人ゴトがうまく混在した状態がプロデュースされている空間」それがカフェであると言えそうです。

齋藤:他人が周りにいることによる安心感ってありますね。
岩本:どちらのテリトリーでもないし。
齋藤:相手のあるコミュニケーションの場合、カフェという場所が提供してくれるのは「ノイズ」だけでなく「フェアネス」であるとも言えませんか?
栗林:落ち合うカフェのロケーションも、お互いの中間地点を選んだりしますね。
齋藤:どちらかがどちらかに一方的にお世話してあげたりしなくてもいいので、コミュニケーションに集中できる。その意味では、現実の「主従関係」をある程度無効化してくれる場所とも言える。
岩本:そうですね。かといって完全に自分の影響が及ばない「他所(よそ)」にいるということでもない。

カフェに行く人間と人間の関係性はどのようなものなのか?を考える

——スターバックスのとても有名なコンセプトに「サードプレイス」という言葉がありましたが、家でも職場でもない「サードプレイス」というコンセプトはそもそもカフェに求められていた根本的なものだったと言えそうです。ではどうしてそれが、スターバックスの興隆や市場の拡大としてここ20年くらいであらためて強く求められたのか?

齋藤:飲食や購買の消費者行動の変化、家族構成の変化、地域や企業への帰属意識の変化、モバイルデバイスの発達などの外部環境の変化もありますが、何より人々が個人で多様な接点を持つようになったことが重要なのだと思います。
岩本:たとえば、現代では同じ学校に通っている友人がいても、学校の活動とは関係のない別の接点で強い結びつきを持っていることがあったりする。その友人とだけ共有している話題や関心とか。もはや学校という場とは無関係な関係性。
齋藤:そういった、個々人の多様な価値観や関心事から、職場や学校や家庭といった環境に縛られない固有の接点が生まれる。
栗林:社会人にもそういった側面が求められていますね。属性に縛られず越境的にコラボレーションしていくことが。
齋藤:人との繋がりが多様な接点になっただけでなく、個人の関心や能力も多様化してる。
岩本:そういう意味では家庭や職場や学校、あるいは地域コミュニティといった属性の強い場所ではない、どこか別の場所で思考やコミュニケーションを深めたいという欲求が出てくるのも必然的ですね。
栗林:それが「サードプレイス」。現代の「カフェ」の役割。
岩本:まあ、実際は「カフェ」で学校の勉強や仕事の打ち合わせをするんですけどね。でも、少なくとも学校や職場と切り離された場所で、環境に強いられるのではなく自らの意思で行為するというところに、場所と行為を自己判断で切り離して自らの手で別の接点を作りだしたという実感覚がある。

「カフェと人間」の関係性をストーリー化にする

——特定の属性から切り離された場所という意味で「ニュートラル」な場所というキーワードにしておきましょうか。断絶のある空間というか、オンとオフを自己主導で切り換えられる空間というか。「ニュートラル」もしくはあえていうと少し「ストレンジ(奇妙)」な場所。適度な非日常性というべきもの。
さて、非常に短時間でしたが、これまでの議論を踏まえて簡単に「PPOF」をまとめてみましょう。

【カフェに行くとき人間には何が起こっているのか?】
Present:
現代において、何か知的な活動を行おうとしたとき、家でも職場・学校でもない空間としてまず人々はカフェを想起する。
Past:
人間はそもそも思考やコミュニケーションを深めるために適度にノイズがある環境を求めるものである。
On going:
デジタル環境との対比から、より体験的なノイズを人々は求めるようになっている。
Future:
「刺激と居心地」という二つの新しい体験的ノイズ環境の提供で、現代のカフェは人間の思考やコミュニケーションに変容を起こすことができる存在になるだろう。

【カフェに行く人間とカフェに行く人間の間には何が起こっているのか?】
Present:
現代において、人と人がリアルにコミュニケーションする場所として想起するのは、まずカフェである。
Past:
古来、公と私の境界線にあるようなどこにも属さないニュートラルな場所を人間は重宝してきた。
On going:
個人の関心や行動が多様化したことで、そのような特定の属性や関係性から隔絶したカフェという場所に人々はかつてより頻繁に訪れるようになっている。
Future:
人々が特定の属性や社会的関係性をオフにして、「個」に戻って活動するフェアでセーフな場所としてカフェの役割が変化していくだろう。

【カフェに行く人間たちの社会では何が起こっているのか?】
Present:
家や職場・学校という物理的な建造物や設備の役割は変化しつつある。
Past:
古来、物理的な公共建造物は権威や豊かさ、美意識や知性の象徴であった。
On going:
人々はより人間の内面性を重視するようになり、重厚長大な権威よりも柔軟で身近な美意識と知性にもっと日常的に触れることを望むようになっている。
Future:
カフェは、人々が劇場や美術館、博物館や図書館に求めていた美や知や好奇心への刺激を、より日常的に提供する場所になっていくだろう。

「人間」という視座で物事を考えるフレームワーク「PPOF」

——「PPOF」はヌケモレなく物事を網羅するためのフレームワークではなく、むしろ、多様な要素が混じり合う事象を、<現在-過去-進行中の現在-未来>というシンプルな物語の構造にすることで対象テーマを生き生きとしたイメージで共通認識するためのフレームです。この3つの「PPOF」にはまだまだ抜け落ちている観点や根拠の曖昧な主張も含まれていますが、カフェのブランディングを行うために、「カフェと人間」という視座で現代社会を捉える目的としては、一定の役割を果たせたのではないでしょうか。本来ですと、この議論に人文科学系領域などの専門家数人に加わっていただき、学術的な見地から様々なトピックを提供して貰います。おそらく「カフェ」はさかのぼれば原型はギリシャ時代からあるかもしれないし、それよりもっと以前からあるかもしれない。カフェの社会的存在意義は元々もっと政治的な意味を持っているかも知れない。雑多な品々をとりあえず身の回りにおいておくという人間の行動は文化人類学的に重要な意味を持っているかも知れない。そのような観点も取り込みながら多角的に議論を進めます。今回はスプリント形式ということで、専門家も招聘しておらずエビデンスもないので、一旦このレベルのまとめにしておきましょう。

齋藤:「PPOF」の有効性はまさに、複雑な要素で成り立つ対象テーマを、一つの大きな物語でとらえることで、明確な共通イメージを浮かび上がらせることができる点です。それからもう一つは、「人間をみる」ことができる点。「人間」という視座で物事を考え捉えるのは意外と難しい。でも、「PPOF」の「人間には何が起こっているのか」「人間と人間には何が起こっているのか」「人間の社会では何が起こっているのか」この3つのレイヤーで考察することで、対象テーマと人間の関係性をかなり本質的なレベルで考えることができます。少なくともそれは今回もできた気がします。
岩本:私は「PPOF」の実践経験は多くないので、「問い」のスケールの大きさを懸念していましたが、意外にもスムーズにいったと感じました。

「PPOF」によって共有化される生き生きとしたイメージ

——これを踏まえ、「カフェのPPOF」というものを一旦まとめます。

【カフェのPPOF】
Present :
モバイルデバイスをはじめとするデジタルテクノロジーの発展と、個人の興味関心や経験能力の多様化により、現代人にとって、特定の属性として拘束されないニュートラルな場所としてカフェが欠かせない重要な場所になっている
Past:
そもそも人間には、適度なノイズがある環境の方が思考やコミュニケーションが活性化しやすいという特徴がある。さらに、思考やコミュニケーションを安全・公平に行うために自他・公私の入り交じる環境を必要とする。
On going:
そして現代では、人々は身近で日常的なカフェという場所に、美術館や博物館、学校という旧来型の権威を代替するような知性や感性への刺激を求めるようになっている。
Future:
さらなるデジタルテクノロジーの発展と対比するように、今後カフェはさらに思考やコミュニケーションを深めるリアルな場としての存在意義を高めていくだろう。適度な刺激と居心地を実現する質の良いノイズに囲まれながら、特定の属性や関係性から隔絶された人々が「個」に戻る場所として、欠かせないものになっていくだろう。


齋藤:過去から現在でカフェの役割が大きく変わっているわけではなく、より個人のためのもの、一人ひとりのためのものになったということでしょうか。通常のブランディング・プロジェクトでの「PPOF」に比べると同語反復や循環論法が気になりますし、もう少しダイナミックに物語化ができそうですが、スプリント形式だと今回はこんなところでしょうか。
岩本:その意味で、確かに専門家に参加して貰う必要性が実感できました。専門家の参加によって「PPOF」がもっと深みのある物語になりそうです。
栗林:「カフェと人間」という視座でカフェを考察するということについては、有効だったと思います。こういったことは、あまりこれまで考えたことがなかったですし、おそらくいきなり「カフェのブランディングのためのブレインストーミング」を行っても、全員で一斉にこういう考察をすることはできなかったと思います。
岩本:私はこの「PPOF」の「適度な刺激と居心地を実現する質の良いノイズに囲まれながら、特定の属性や関係性から隔絶された人々が「個」に戻る場所」というのが気になっていて、あるイメージがさきほどから湧いているのですが、それは「森の中に座っている」ようなイメージなんです。
栗林:分かります。そういうイメージありました。
齋藤:適度に閉じられていてプライバシーがありつつ、適度に開かれていて周囲に認知されている状態。「ノイズ」というのも森の中の様々な物や音に囲まれているイメージそのままですね。
岩本:「紛れる」という、このディスカッションの初期段階で出てきたキーワードにも通じるものがあります。
栗林:こんな風に、みんなが持っているバラバラなキーワードやイメージが、この「PPOF」でつくったストーリーを受け皿にして認識したり議論したりできるというのもいいですね。
岩本:ストーリー化することでビジュアルイメージも自然と湧いてくる。

ブランドの「探究テーマ」を策定するとは?

——さて、「カフェと人間」の関係性について、大きな視座を獲得できたところで、実際のプロジェクトでは、いよいよブランドの核となる探究テーマを策定します。新規事業である「雑貨カフェ」はどんな探究テーマを持つブランドになるのか? 「カフェと人間」という大きなストーリーをみすえて、どんな探究テーマを設定するのか、まさに5BSの醍醐味と言っても良いフェーズです。今回は、時間の都合で「PPOF」までのワークとしますが、「探究テーマ」策定の考え方だけ、いまいちどシェアしておきます。
探究テーマを策定するとは、「企業と顧客が共に探求していく未知の価値を言語化すること」です。それを私たちはWILL型のコミュニケーションと呼び、従来の広告発信やマーケティングリサーチやコミュニティ形成といった手法のコミュニケーションとは異なる、ブランド駆動型の手法であると定義しています。

【ブランド駆動型企業に必要なWILL型コミュニケーション=探究テーマ策定】

SHARE型のコミュニケーション
<企業が知っている>×<顧客が知っている>
→コミュニティ・ファンづくり施策

CAN型のコミュニケーション

<企業が知っている>×<顧客が知らない>
→広告・販促的訴求施策


MUST型のコミュニケーション
<企業が知らない>×<顧客が知っている>
→インサイト・マーケティング施策


WILL型のコミュニケーション
<企業が知らない>×<顧客が知らない>
→探究テーマ型施策


「PPOF」を何のために行うかというと、まさに「企業も顧客も知らない未知なるテーマ」を「人間とカフェ」という視点で導き出す、そのためのベースづくりのためです。この大きなストーリーから繫がるブランドのビジョンを言語化するところから私たちのブランディング・プロジェクトは始まります。

齋藤:さきほどの「PPOF」の議論がブランディング・プロジェクト全体に効いてきます。通常だと2、3日かけてワークショップとディスカッションを行いますが、これだけスプリント形式で行っても、ユニークで本質的な視座に立つ経験を体感できました。このスプリント版をブランディング・コンサルティングのプロジェクトだけでなく、もっとクリエイティブのアイデア出しや、プロジェクトがスタートする前のアイスブレイク的なワークショップでも活用すると良いと感じました。
栗林:やってみると、思っていたよりもみんなで自然に合意形成できるものなのだなと感じましたね。だから、案件や課題について、おおまかに価値観を擦り合わせたりするのにとても有効だと思います。その意味で、アイスブレイク的なワークショップのメニューとしてもいいですね。
岩本:一定の期間をかけて「ブランドビジョン」を策定すると、その期間内に様々な不確定要素や条件制約が追加で発生してしまい「ブレ」ていく、という問題の解決方法として、このようなスプリント形式の「PPOF」をプロジェクトの途中でテーマを変えて何度か実行してみるのも良いと思います。スタックしかけているプロジェクトをもう一度揺り動かすのにも最適だと思います。今後はこれを機にもっと身近なツールとして使いこなしていきたいと思います。

2020.11.16 @アートアンドサイエンス代々木本社オフィス

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