Clients Interview

スクールブランディングとは学校創設の「理念」を
言葉とデザインで「可視化」していくプロセス

未病を究めるという「新しい考え方」を周知させるために必要なこと
それがブランディングデザインなのだと気づかせてくれた

現在、神奈川県にはヘルスケアニューフロンティア推進本部室という特別室が設置され、黒岩知事が掲げるヘルスケアニューフロンティア政策で、未病産業や最先端医療などを組み合わせて新たな健康観である「未病」を推進していこうという取り組みがあります。ヘルスイノベーションスクール(SHI)の設立には、こうした取り組みを率先して推進できる人材を育成していこうとする役割がありました。文部科学省に大学院設立の申請をし、その時点で言葉としての「ヘルスイノベーションスクール」はすでに存在していました。次のステップとして、この新しい大学院の存在を広く世間の人々に知らせる必要があったのですが、その準備をどう進めていくのかが課題でした。
Webサイトも無ければパンフレットも無い。言葉だけの存在だったものに、どうやって実体をつけていけばいいのか。何をどうやって進めていけばいいのか、当時一番の悩みでしたね。伝えるべきビジョンやWebサイトをデザインするうえで必要なビジュアルイメージなども定まっておらず、振り返ってみれば、ブランディングの必要性を感じつつも、実際にはその重要性について十分に理解していなかったように思います。
SHIを象徴するようなビジュアルはもちろん、考え方そのものなど、新たな概念や思想を理解してもらうために必要な告知手法や、SHIをブランドとして認識・定着させるために必要なブランディングプロセスの優先順位など、必要なことが膨大すぎて、「やるべきこと」の整理ができずにいたと言ってもいいかもしれません。
アートアンドサイエンスに提案いただいた数々の施策はとても新鮮で、新たな気づきや学びがあるものでした。頼りがいのあるパートナーを得て、ブランディングのための施策、目指すべき方向性が明確になっていったと思っています。結果、開校初年度において、定員を上回る学生の応募を獲得することができました。

成功の要因は「真摯なコミュニケーション」
ブランディングのプロセスにおけるファシリテーションの重要性

依頼にあたって、何よりもまず、言葉としてしか存在しなかったSHIの理念を理想的な表現にデザインしてくれる会社に依頼したいと思っていました。一方で、公的機関であるため、あらかじめ1社だけを指名することが難しく、プロポーサル方式でのコンペティションに参加していただく段取りをとらざるを得ませんでした。県の政策にも関わる大学院という教育機関の組織上、さまざまな関係各所との連携が必要になります。そうしたコミュニケーションの面でも細やかな対応をしていただける会社が見つかるかどうか、正直不安もありました。
アートアンドサイエンスには期待値以上のものを提供していただいたと思っています。ブランドを構築するさまざまな過程の中で、SHIのあるべき姿を形にしていく制作と並行して、多くの方々とのコンセンサスをとりながら一つの方向に導いていくプロセスまでも担っていただきました。

さまざまな意見がある中で、どのように意思決定を進めていけばいいのかを相談させていただきながら、じっくりと時間をかけながら合意形成を図ることができ、とても助かりました。先生方が集まる広報関連の説明会の会場にも足を運んでいただき、学生募集に対するPR活動の方針を説明いただいたのですが、計画的でコンセプシャルな施策はとても分かりやすく、先生方の協力的な支持を得ることができてよかったです。
Webサイトやパンフレットといったデザイン制作だけにとどまらず、SHIという新しい提供価値にふさわしいターゲットを設定した上で、最適な媒体とふさわしい内容の広告出稿までも提案していただけたことも、とてもありがたかったです。対談の記事広告を制作した際も、演者の考え方や伝えたい内容をリードして引きだしていただき、大変質の高い対談記事に仕上がり、高評価を得ることができました。

SHIに必要な初期段階のブランディングを実行してくれただけでなく、ファシリテーターとしてあらゆるニーズをくみ取って実に親身に対応していただけたことで、SHIに関わる人々の理解や意識の深化といったインナーブランディングにも影響を与えてくれたと感じています。

印象だけに左右されない確かなブランドビジョンが
共感とコミットメントを引き出すインナーブランディングに繫がる

デザインそのものの良し悪しや好みで意見が割れて収拾がつかなくなる、ということもあったのですが、そんな時も先にデザインの意図を説明することでスムーズに理解を得ることができました。なぜこの色なのか、なぜグラデーションなのか、デザインひとつ一つに意味があり、明確にその理由を説明できるのは、コンセプトがしっかりしているからです。あらためて一貫した設計ができていることの重要性を実感したエピソードは多数ありますね。
また、エッジの利いたデザインにしていただいたことで、他の大学と大きな差別化を図ることができました。他の大学のパンフレットは、表紙にキャンパスの写真が大きく扱われていたりする中で、今回ご提案いただいたSHIのパンフレットデザインは、大学名にも使われている「イノベーション」にふさわしい、新しさや洗練された印象を与えてくれています。
初出展した学会会場に掲示したポスターを見て、そのことを実感しました。ずらりと並んでいる他大学のそれらとは明らかに異なるデザインは人々の目をひき、会場を訪れる人々は足を止めてSHIに関心をもってくれたのです。とても効果的に新設校であることの認知を広げることが出来たと思っています。
映像制作においても、スタイリッシュな映像に仕上げていただいたのですが、SHIの持つ、社会問題を解決する「意志」のようなものを感じていただけるようなイメージの楽曲を採用していただくなど、映像につけるBGM一つとっても明確な意図と拘りをもっていたことにも驚きました。SHIの新しい考え方や理念をとてもよく理解していただき、細部にわたってコンセプトを意識した提案をいただけることにおいて、絶大の信頼をおいています。
今年度SHIは第二期を迎えます。今後、後続の公衆衛生学の大学院が増えていく中において、これまで以上にSHIらしさを打ち出していかなければならないと感じています。そう思えるようになったのも、アートアンドサイエンスと二人三脚でSHIの立ち上げを行うことが出来たからだと感じています。ブランディングにおけるコンセプトの設計力と、それを表現する言葉の力には、いつも学ばせてもらっています。

  • Client

    ヘルスイノベーションスクール(神奈川県立保健福祉大学大学院)

  • Interview

    ヘルスイノベーションスクール設置準備担当
    神田 匡
    ※所属・肩書きは取材時点(2019年)の情報です

  • Business Type

    学校・教育

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