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地域活性プロジェクトを読む・その6「有田陶器市」

2013年のゴールデンウィークで、集客が好調だった九州・沖縄エリア。なかでも、賑わいをみせたのが過去最多の137万人を集めた有田陶器市です。その理由には、連休分散による国内志向、好天に恵まれたこと、アベノミクス効果など外的要因も考えられますが、今回はイベントそのものの魅力に迫ります。

そもそも、有田陶器市とは?a2
有田陶器市とは、JR有田駅周辺から上有田駅までの約4km、500を超える店が建ち並び、有田焼だけでなく様々な焼物の掘り出し物が見つけられる、有田の一大イベントです。
きっかけは、陶磁器不況に陥った1896(明治29)年。技術の向上をめざして開かれた陶磁器品評会といわれています。後の1915(大正4)年、深川製磁の深川六助の呼びかけで、遠方から有田に来てくれる人を楽しませるために行われた、傷物や半端物を安く売りさばく“蔵ざらえ大売出し”が陶器市に発展したといわれています。

 

a3_2a5a 100年前から続く、サービス精神が息づいている
有田陶器市の会場は、まちのあらゆるエリア。広大な範囲で景色が単調だと、巡回した場所が把握できなくなりそうですが、まちの景観をいかして明確にエリア分けしているためそのような心配は無用です。また、一般的な陶器市は駅から遠い運動公園に多数のテントを設営するスタイルが多いのですが、ここは駅直結。おでかけ前のハードルが下がっていると考えられます。特に近隣の長崎・佐賀エリアは車社会。電車に乗ること自体に親和性がない土地で、乗り継ぎが加わることは心理的な負担になるため、駅直結は大きなメリットと考えられます。

会場に着くと、各エリアでイベントを多数開催。来訪者を飽きさせない工夫が施されています。たとえば、黒牟田応法窯元市では、懐石料理を有田焼のお弁当箱(持ち帰り可)によそおう“陶彩弁当”を販売。皿山通りでは朝6時から干支の器(持ち帰り可)に朝粥を販売(500円)したり、有田に古くから続く”皿かぶり競争“というユニークなイベントが開催されています。
特に、地元では、毎年陶彩弁当を食べることで春を感じる人や、朝粥が入った干支の器のコレクターもいて、制作者にも張り合いが出ているといいます。このようなリピーターも多く、毎年陶芸家とお客さんで、1年を無事に過ごせたことを報告し合うというふれあいも生まれています。
他にも、有田でしか見られない景色を案内マップにわかりやすく紹介することで、歩いて回る理由をつくっています。それには、のぼり窯を解体したときに出たレンガ製のトンバイ塀、樹齢100年ほどの並木、約120年の歴史がある上有田駅や、1616年に発見された陶石の採掘場などがあります。さらに、ご当地グルメフェア、陶器市キャラクター・ありたんのスタンプラリー、一流日本料理店「分とく山」総料理長・野崎洋光のトークショー・料理実演などのイベント。家族や友人たちと楽しめる体験イベントとしては、絵付け、手びねり体験、ろくろ体験、ランプシェードづくりなども。さらに、今年は「アートジャック」と題し、歩行者天国の道路に自由に絵を描くイベントを5月5日こどもの日に開催。有田焼の原料をチョークにし、有田焼の絵付け師と子供たちが一緒になって絵を描く、ここでしかできない体験を提供。子供たちの心に刻まれ、次回の来場へつながるイベントだったと考えられます。また、当人たちが楽しいだけではなく、陶器市の微笑ましい景色として来場者たちにも良い印象を与えたことでしょう。

陶器市前に、丁寧に清掃するまちの人々

陶器市前に、丁寧に清掃するまちの人々

おもてなしの気持ちを体現する、無料施設が充実
今年は特に、家族連れが目立ったといわれていますが、入場無料で、欲しかった器が半額程度で買えるのだからこんなにリーズナブルなゴールデンウィークイベントはないかもしれません。たとえば九州にある人気レジャー施設の1日フリーパス料金※をあげてみると、スペースワールド(福岡)、ハウステンボス(長崎)、三井グリーンランド(熊本)のいずれも子供1人でも3,000円を超え、家族の人数や交通費を換算すると相当な金額になってしまいます。
一方、有田陶器市では、一部無料のシャトルバスや駐車場などを用意しており、実際に購入するものにお金を使ってもらうイベント構成。そのため、有田町内にある学校の運動場、公園などが臨時の公営駐車場に開放され、約15カ所・約4,100台を駐車可能に。私設の駐車場も約4,300台(有料)分、確保されているという充実ぶり。料金も、1日500円などとイベントを十分楽しむことを考えられた日割り制。さらに、駐車場や道路は、まちの人々が事前に掃除して、来場者に気持ちよく使ってもらえるような配慮も。また、あらゆる駅から出る無料シャトルバス、無料荷物預かり所、障がい者用トイレ、車いす貸出所、無料休憩所、宅配便受付所など、どんな人も楽しめるような心づかいが数多くみられます。

近隣の陶器市とも協力関係にo0640048012497603150
有田陶器市が、他の陶器市とは大きく異なることは、近隣で2つの陶器市が行われることでしょう。特に、隣町で開催される波佐見陶器まつりとは、以前から協力関係にあり、両者間を9時から17時まで約30分おきに無料のシャトルバスを走らせています。様々な旅行会社が有田陶器市と波佐見陶器まつりをセットで巡るプランが毎年数多く組まれており、2つの陶器市を巡る楽しさが浸透しています。
親子で巡る場合は、香蘭社や深川製磁、人間国宝の井上萬二窯、柿右衛門窯といった窯元も擁する伝統的な有田焼と、白山陶器やHASAMIといった若者に人気がある波佐見焼が見られることは大きなポイントと考えられます。

 

人気イベントゆえに、陶器以外での見所も249610_155547054510989_5059300_n
有田陶器市は、磁器とはまったく別ジャンルでも人を引きつける特徴もあります。それは、JRの臨時列車「快速 有田陶器市号」、「特急 有田市みどり91・93・94・96号」の運行でしょう。特に、「快速 有田陶器市号」は、ふだん走っていない旧型の車両。特急「みどり」や「ハウステンボス」に関しても、陶器市限定で上有田駅に臨時停車するのです。これらに加え、有田駅からはMR(松浦鉄道)という第三セクターの列車も走っており、鉄道ファンには必見のスポットになっています。
近隣には、線路横に境内がある陶山神社という絶好の撮影スポットも。ここは、磁器製の大鳥居や狛犬など、他の神社には見られない特徴も併せもっています。同時に、2012(平成22)年の陶器市の初日に約4,000個以上も売り上げた駅弁・有田焼カレーも特別に多数販売しており、鉄道ファンにはうれしいイベントといえるでしょう。

伝統的なイベントを、まちをあげてのサービス精神や近隣エリアとの協力関係を結び盛り上げていくことに加え、年齢層を絞った内容を複数用意することで結果的に親子で巡れるものにすること、「アートジャック」のようにまちの景色をつくるようなイベントを開催すること、そして脈々と続けていくことが、多くの人を魅了する地域イベントの秘訣なのかもしれません。

2013年 主な陶器市の来場者
有田陶器市が圧倒的に人気が高いことがわかる。
第110回有田陶器市 約137万人約500軒(4月29日-5月5日)
第91回益子春の陶器市 約42万人(4月27日-5月6日)
第55回波佐見陶器まつり 約31万人 約130軒(4月29日-5月5日)
第32回笠間の陶炎祭 約47万人 約200軒(4月29日-5月5日)

※九州にあるレジャー施設の1日フリーパス料金
<スペースワールド>
キッズ(4歳〜未就学児)1,050円、小学生3,150円、大人(中学生〜59歳)4,200円、シニア(60歳以上)2,100円
<ハウステンボス>
小人(4歳〜小学生)3,500円、中人(中・高校生)4,700円、大人(18歳以上)5,900円、シニア(60歳以上)5,400円 いずれも一般のお客様の場合
<三井グリーンランド>
子供(3歳以上中学生以下、身長120cm未満)3,300円、子供(3歳以上中学生以下、身長120cm以上)4,400円、大人(高校生以上)5,400円、シニア(65歳以上)5,400円

写真提供:松尾佳昭