• HOME
  • COLUMNS
  • 『椿会展 2013 -初心-』@ 資生堂ギャラリー【展覧会紹介】

広告やデザイン、クリエイティブの情報コラム

特集記事

『椿会展 2013 -初心-』@ 資生堂ギャラリー【展覧会紹介】

銀座の資生堂ギャラリーにて、第七次となる「椿会」がスタートしました。「椿会」は第二次世界大戦後の1947年、資生堂ギャラリーの再開にあたって企画されたグループ展で、当時の和洋画壇を代表するメンバーが集い開催されました。数年にわたり同じメンバーで開催されるのが本グループ展の特徴で、その後も、資生堂ギャラリーの新装や椿会60周年などの節目を起点に、時代を代表する顔ぶれが集まり、第六次までに合計80名の作家が参加しています。そして、現代美術に軸足を置いた第四次以降、回を重ねるごとに同時代性の強さを増し、アートの可能性を考える場としても重要な役割を担ってきたこの伝統的なグループ展は、第七次開催にあたりその性格をさらに強めようとしています。

tsubaki_2

「3.11」後、への意識

今回のメンバーの選出には、「3.11」が強く意識されていると言います。赤瀬川原平、畠山直哉、内藤礼、伊藤存、青木陵子という、世代や性別を問わない人選について、資生堂ギャラリーアドバイザーの水沢勉氏は「完全な復旧や処理は困難であろうという認識のもと、被災後の「芸術」の意味や意義を問いかけ、答えようとする姿勢を共有するすぐれたアーティスト」を選出したと記しています(『花椿』四・五月合併号より)。「3.11」以降、アートの意義は多くの場所で議論され、その意義を問う展示も各所で行われてきました。しかし、その結論はすぐに出るものではありません。もっともっと意見を交わす必要があるし、作品と向き合う時間もいります。そのなかで、向こう5年にわたる第七次椿会は、「3.11」以降のアートについて熟慮する場として、ひとつの中心になるのではないかと思います。

作家の「初心」と芸術表現の「初心」

tsubaki_1

これまで椿会展には大きくタイトルが掲げられることはありませんでしたが、今回は「初心」という名がつけられています。これは5年間変わらず掲げられ、5名それぞれが「初心」というテーマのもとに、作品を展示します。赤瀬川原平は、あの“千円札”の新作を、畠山直哉は1995〜2009年のシリーズ「CAMERA」からホテルの客室照明が生み出す雰囲気を切り取ったモノクロ写真を、内藤礼は近年制作を続ける「color beginning」シリーズの新作を、伊藤存は氏の代表的な手法である刺繍を使った絵画作品の新作を、青木陵子も独特の世界観を放つ色えんぴつによるスケッチ作品の新作を展示。その他、各作家につきもう1〜2点の作品で、空間が構成されています。

作家としての初心もあれば、芸術表現としての初心もあるというのが、全体を見回しての印象。特に赤瀬川原平の千円札と(作品タイトル「ハグ1」)内藤礼の「color beginning」が壁のコーナーを境に並んで展示されている一角は、そのことを象徴していました。言わずもがな、赤瀬川原平の千円札には氏の作家としての初心が、そして色が見えるか見えないかという曖昧で繊細な世界を描いた内藤礼の「color beginning」には、芸術表現としての初心が内在しているように思えました。

芸術表現の、引っ張りだして見せるたくましさ

また、奇しくもこのふたつの作品は、近距離ではその全体像を把握しにくいという性格を持っています。クラフト紙に旧千円札のオモテ面をうっすらとインクジェットプリントした「ハグ1」は、近くで見ると一見なにが印刷されているのかわかりませんが、一歩、二歩と後ろに下がると、ぼんやりと千円の文字や聖徳太子の肖像が立ち現れます。そして、その場から体の向きを変えると見える「color beginning」のやさしく空間を包み込むような色彩は、色を確かめようと近寄るにつれ、はかなく消えていきます。この感覚の不思議さ。表現としてはもちろん、人によってこの世にセットされた「紙幣」と、あらかじめ自然界に存在していた「色」という、およそ対極に位置するものに対する疑問や思考への手がかりが同時にこちらを向いていることに、得も言われぬ不思議さを覚えました。そして、この、作家それぞれがあらゆる何かに向き合い、未だ表現されていなかったものを引っ張りだして見せるという、芸術表現のたくましさのようなものにあらためて感じ入り、うれしくも思いました。

「3.11」以降の今に提示すべき「初心」として選ばれ・表現されたものであることも考えると、思いはさらにめぐります。世代も性別も異なる各作家の作品一つひとつに対して、鑑賞者側もアートに対する初心を持って向き合えるような、そんな空気が流れる展覧会でした。これからの5年、年に1度開かれる展示で、作家の提示するものがどう変わっていくのか、アートの意義がどう見えてくるのかに注目しつつ、それを軸に、自分のアートに対する態度も確かめていきたいと思います。会期は6月23日(日)まで。ぜひぜひ足を運んでみてください。

・・・
『椿会展 2013 -初心-』

主催:株式会社 資生堂
会期:2013年4月12日(金)~6月23日(日)
会場:資生堂ギャラリー 東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
Tel:03-3572-3901
Fax:03-3572-3951
開館時間:平日 11:00~19:00 日曜・祝日 11:00~18:00
毎週月曜休(月曜日が休日にあたる場合も休館)
入場無料
展覧会HP:http://group.shiseido.co.jp/gallery/exhibition/
・・・

※展覧会のロゴおよびグラフィック全般は、下記関連記事にある仲條正義氏によってデザインされています。