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地域活性プロジェクトを読む・その4「みんなの経済新聞ネットワーク」

TwitterやFacebook、NEVERまとめなど、Web上で情報をキュレーションすることが日常的になっています。一方、情報の再編集に依存せず、価値ある一次情報を生み出すメディアの重要性があらためて注目されているようにも思います。今回は、10年以上も前から細やかなニュースで一次情報にこだわった地域情報を発信し、現在、国内外に約80エリアのネットワークをもつ「みんなの経済新聞ネットワーク」についてご紹介します。

 

周りにやりたいことを宣言し、好循環をつくる。

いま、国内外の約80エリアにネットワークをもつ「みんなの経済新聞ネットワーク(以下、みん経)」。これは2000年4月、西樹(にし たてき)さんが1人で始めた「シブヤ経済新聞」からスタートします。
当時の渋谷は、ITベンチャーが多く集まっていたものの、いまのようにネットのパワーが十分に発揮されておらず、タイアップ記事を中心としたフリーペーパーが多かった時期。西さん自身が欲しいと感じていた消費者目線のリアルタイムなメディアがなかったことや、自身が大学入学以降拠点としていた渋谷がとても好きだったこと。加えて、マークシティの建設などが始まり大きく変貌を遂げつつある街を、長期的に記録していきたかったという気持ちが新しいメディアをスタートさせる大きな動機だったといいます。
始めるにあたって、渋谷周辺の街を消費の側面からとらえることをコンセプトに「シブヤ経済新聞」とネーミング。取材は、渋谷からほぼ1駅圏である「広域渋谷圏」と名付けたエリアに限定するなど、少しずつアイデアを蓄積していった。そんな話を周囲にしていたところ、渋谷をテーマにした番組を考えていたJ-WAVEの番組とのコラボが決まり、週1回の30分番組で渋谷の今を伝えるという話が舞い込んでくる。1回目の放送である2000年4月7日に「シブヤ経済新聞」のサイトも立ち上げ、本業と並行してシブヤの魅力を多くの人に伝えていくことに。ラジオと同時並行で進行することで、継続せざるおえない環境となり非常に鍛えられたといいます。

会って、自分の思いを伝える。
ポリシーを理解してくれた人をパートナーに。

「シブヤ経済新聞」をスタートさせて4年後となる2004年、西さんの知人が横浜に拠点を移すきっかけで「ヨコハマ経済新聞」を、2005年J-WAVEが六本木ヒルズに移転したタイミングで「六本木経済新聞」を立ち上げ、少しずつ広がりを見せ始めます。大きな転機は2006年。ヤフーが、地域に根ざしたニュースをリリースできるパートナーを探しており、デジタル化され、全国的にまとりまりがあるニュース配信をしていたみん経に声がかかります。ヤフーの地域ニュースとして配信されたことで知名度が格段に上がり、パートナーを希望する方々からの連絡が増加。西さんは、問い合わせのたびに担当者に直接会ってコンセプトを話し、ほとんど収益がでない反面様々な利点はあること、継続することが大切なメディアだということを丁寧に伝え、ポリシーを理解してくれた法人をパートナーに迎えていきます。パートナーを希望してきた方々には、メディアを持ちたい、地域の結びつきを作りたい、みん経のファンなど様々な動機があり、業種は印刷会社やウェブ制作会社、TV番組制作会社などが多い。また、過去には、みん経のファンの方から個人で参加を希望した方も。法人でないため一度は断ったものの、法人として再度問い合わせを受け、いまではパートナーとして地域の記事をリリースしてもらっている。スタートから13年を経た現在では、国内外に約80エリアのネットワークにまで成長した。

自分たちの役割を果たし続ける。

これほどまで、多くのファンを持つメディアに成長したのは、なぜだろう。それは、ひたむきに継続してきたこと、実際にそこに住む人たちが細やかに街のニュースを配信するというユニークさなどが挙げられる。とはいえ、最も大切なのは、ニュースそのもの。みん経は、新聞の根っこである質の高いニュース制作に大変注力しているのだ。様々な試みができるネットでの運営にも関わらず、テキストベースのシンプルなデザインに仕上げコンテンツも増やしていないのは、その理由から。
記事は、スタート時に掲げたポリシーを貫き、タイアップはなく、リアルタイムで消費者目線のものを制作している。新聞全体は、様々な要素からできている街を言語化するように、大小のトピックスを掲載。ビッグニュースはもちろん、小さなお店の開店や閉店を関係者の思いも含めてファクトベースで紹介している。また、PRは得意ではないが、ユニークなことにチャレンジしている人たちにも光を当てた記事をリリースすることで、街でがんばっているる人にエールを送っている。スケールの大小に関わらず熱い人々を取り上げており、読者に街の盛り上がりを印象づける新聞に仕上がっている。
また、約80エリアにまで広がりをみせたことで、その土地に求められるニュース傾向を考え、内容に差異を出しつつ、一方で大規模なメディア全体としての強さが感じられるようカンタンなルールを制作したり、サーバーやプログラムは一元管理することで統一性も出している。さらに、ネットで配信しているため、どの地域の人が見ても、内容やニュアンスが理解できるよう配慮している。
今後は、データが軽いテキストと写真の組み合わせで、ずっと先の未来まで継続的に街のことを記録していきたいという、始めたことで見つかった目標を掲げている。
自分のやりたいことから、誰もやっていないポジションを見つけだし、コツコツとその役割を果たし続けていることが、多くの人々を魅了する秘訣なのかもしれません。

<記事ルールの一部>
・平日は、1日1記事以上リリースすること
・写真は、1記事に1〜2枚はレイアウトすること
・リンク先は、1つだけにすること
・コラムやエッセイではなく、事実をベースにした記事にすること

<ポイント>
・自分のキャラクターをしっかり把握して、続けられるテーマをみつける。
・続けられるテーマのなかから、誰もやっていないポジションを見つける。
・自分自身が、その活動の一番のファンであり続ける。
・やりたいことを宣言して、好循環をつくる。