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地域活性プロジェクトを読む・その1「84(はちよん)プロジェクト」

ここ数年の地域プロモーションの傾向として、「地域にとってマイナスイメージのものをそのまま提示する」というようなスタンスに支えられたものが目立っていると思いませんか。元をたどればB級グルメブームやテレビ番組「秘密のケンミンSHOW」などにその源泉を見て取ることができると思うのですが、ちょっと自虐的な地元意識を持ってマイナスをマイナスのまま放り出すことが逆説的に地域活性につながる要素となることは、今という時代にマッチした現象なのかも知れません。しかしその一方で、マイナスから出発していても、それをプラスに転換させる、あるいは他にない「個性」として見直していこうという、押しの強い(?)プロジェクトももちろんあります。そのひとつが「84(はちよん)プロジェクト」だと思います。

「84(はちよん)プロジェクト」は、高知県に住むグラフィック・デザイナーの梅原真さんが中心となり、高知県の森林率84%という数字をそのまま前面に出して森林に関するさまざまな価値を創っていこうと始められた試みです(2009年の「8月4日」に誕生。現在はNPO法人化もされています)。この森林率84%というのは日本一高い数字で、反対から見れば平地の占める割合が日本一低いということも意味します。平地がなければ製造業を行う工場が建てられないということでしょうか、高知県はかつて製造品出荷額が全国ワースト1になったこともあるそうです。というわけで、そういう不名誉なイメージを換気させてしまうのが「84%」という数字なのですが、この数字を冠として「売れない木ばっかりが占めて平地も少ない…」と漏れるため息を「我が山こそCo2を吸収する巨大なマシーンなのだ!」とプラス思考で捉え直し新しいプロジェクトとしてしまうのが、梅原さんの土佐人らしい侠気とユーモアでしょう。素直に、面白いなあと感服してしまいます。

プロジェクトと名乗られてもいますが、もしかするとブランドと形容するほうがしっくりくるかも知れません。例えば梅原さんは、背中にデカデカと「84はちよん」と書かれた作業着が日本一の森で間伐の仕事をすることのプライドを表すことになれば、言葉が「はちよ〜ん」となって朝の挨拶や乾杯の音頭にも使われるような楽しいコミュニケーションのメッセージにもなると言います。また具体的な商品としては、缶詰大の材木を二酸化炭素について学べる解説ラベルが包んだちょっとシュールな教育ツール「Co2のカンヅメ」、ヒノキチオールという溶液に浸された10センチ角の板が袋に詰められ開けると香りが飛散するという「四万十ひのき風呂」など、ユニークなものが目白押しです。後者は特にヒット商品みたいで、これまで地域の銀行や電力会社、大手出版社が発行する雑誌などから引き合いがあり、2億円以上(!)の売り上げに繋がっているそうです。

         

このプロジェクトのすごさは、とにかく、高知の森や林や木に関わるさまざまなコト・モノを「84はちよん」の風呂敷で包み、県をあげてマイナスイメージを吹き飛ばしてしまおうという梅原さんの豪快さだと思います。居直る、というと語弊がありますが、居直って楽しんで、地域を元気にする、そういう最高の連鎖が生まれるならば、どこの地域でも、どうすればマイナスをプラスに変えることができるのか、この一点をじっくり且つ面白おかしく考えてみることがまず有効かも知れません。ちなみにこの場合も、梅原さんが最初にアイデアを持ち出したとき、誰一人として賛同してくれる方はいなかったそうですから。

84(はちよん)プロジェクト