• HOME
  • COLUMNS
  • 『鈴木成一装丁を語る』鈴木成一

広告やデザイン、クリエイティブの情報コラム

本の紹介

『鈴木成一装丁を語る』鈴木成一

日頃からよく書店で目にする、あるいは自宅の書棚に少なくとも一冊くらいは誰でも持っているにちがいない、人気ブックデザイナー鈴木成一さんが装丁を手がけた本。その鈴木一成さん自身が、これまで手がけられてきた数々の仕事から120冊程度を選んで、「演出」意図を自ら解説してみようという試みがこの自選集です。

まず、一冊一冊の作品解説が、とても簡潔にまとめられていることにちょっと拍子抜けするくらいの印象を持つでしょう。見開きの右ページに本の表紙画像、左に長くてもせいぜい400文字程度の解説という構成なのですが、一冊の解説を読むにはものの数分あれば十分です。

中にはきっと、のたうちまわるような思いで制作した作品もあるはずだと察するのですが、どの作品についても、コアになるコンセプトとそれを実現する発想・技法が、まるでスライドショーでも見ているかのようにスタスタと解説されていき、とてもリズミカルで小気味よい心地がします。周辺から中心に向かって語ることをせず、コンセプトとアイデアだけでぐっと真ん中を摑んで理解させるという解説スタイルは、そのままブックデザインという表現につながるものなのでしょうが、広告制作のプロジェクトにおいて、プロデューサーやクリエイティブディレクターが、クライアントやスタッフにプレゼンするときに必須の「一言でまとめる」能力にも通じるのではないでしょうか。

アイデアを実現するプロセスが、随分さらりと解説されるので、作品自体とても簡単につくられているように錯覚してしまうほどなのですが、ともかく常日頃のインプットの幅広さ、記憶の深さには驚きます。いつも気になっていた請求書の手書き文字を装丁に活かしたいと、その請求書の送り主に文字を依頼したり、かねてから頭のかたちがいいなと思っていた友人の後ろ姿を撮影したり、また以前からアートフェアで注目していた作家の作品を使用したりと、本のためのデザイナーという以上に、ある意味で、本と現実の別のモノを繋ぐコーディネイターのようにも見えてきます。

デザイナーはもちろんですが、プロデューサーなどクリエイティブをマネジメントする立場のひとにもきっと楽しめる、清涼感に満ちた刺激がくせになるタブレット菓子のような作品集です。

装丁を語る。 [単行本] 鈴木 成一 (著)