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本の紹介

『THE BOOK OF HIPHOP COVER ART』

前回の『Factory Records: The Complete Graphic Album』に引き続いて音楽関係でのおすすめなデザイン本をご紹介します。

『THE BOOK OF HIPHOP COVER ART』 Andrew Emery (著)

1980年代初期から現在に至るまでの、ヒップホップの名作レコードカバーをまとめたデザインブックです。

取り上げられているのは グランドマスターフラッシュ、アフリカバンバーター、エリックB&ラキム、ランDMC、パブリックエネミー、デラソウル、ビースティボーイズなど。
かつて宇田川町でレコードを買いまくっていたB-BOYやDJには懐かしいジャケットでいっぱいのこの本ですが、デザインや写真表現という観点から見てもなかなか楽しめる1冊です。

「凡人は模倣し、天才は盗む」というピカソの有名な言葉がありますが、初期〜90年代のHIPHOPとはまさにそれを象徴するカルチャーだったように思います。DJの生み出した「サンプリング(盗む)」という手法は音楽制作のみならず、この本に掲載されているジャケットワークにもいかんなく発揮されています。本書のP125〜「BEAT BITERS」という章でまとめられていますが「HIPHOPは欲しい物をすべて手に入れるのだ」という序文通りあらゆるジャンルからアートワーク、デザイン、写真を(いい意味で)拝借しているところは実に痛快で参考になります。

他にもグラフィティアート(タギング)やタイポグラフィを使ったデザイン、独自のキャラクターやイラストを使ったもの、政治的なメッセージを込めたもの、広告的な表現、表紙と裏表紙でオチがあるものなど様々な表現があり単純に見ているだけでも楽しめます。有名なアーティストのものだとエリックヘイズ、バスキアなどの作品も載っています。

また少し個人的な見方ではあるのですが、本書アートワークで一番興味深いと思っているのは、黒人独特のストリート感覚というのでしょうか(細かいところをあまり気にしない感覚?)ある種B級的な写真表現が多いというのもこの初期HIPHOPアートの面白いところだと思います。
具体的には
(「RUN DMC(下記参照)」記念すべき1stアルバムなのに写真がブレブレ?)
(「Grandmaster Flash & the Furious Five / The Message(下記参照)」6人組なのに7人いる?)
(「Tricky Tee / Leave It To The Drums(下記参照)」このポーズは?)
と上げるときりがないのですが、この素人的で計算されていない感じはある意味アートと言ってもよいのかもしれません。
※某CS番組でライムスター宇田丸氏もこの部分を取り上げHIPHOP独特の“途中感”というキーワードで語っていました。

ロックやジャズのアートワークはよくいろいろなデザイン評論で語られますが、HIPHOPというジャンルはまずデザインと一緒に語られることはないのでこの機会に注目してみました。イエーボイー。

 『THE BOOK OF HIPHOP COVER ART』 (ペーパーバック)Andrew Emery (著)