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リンクトインとはなんですか? SNS受容のこれからをエンジニアに聞く

リンクトイン(LinkedIn)の日本語版がオープンしました。
海外では2003年にサービスを開始しており、2011年3月の登録ユーザーは全世界で1億人を超えています。mixiやFacebookといった他のSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)と比較しても歴史と規模のあるサービスであると言えます。
今回はITネットワークの新しいプラットフォームとして高い期待を寄せられるこれらリンクトインなどをはじめとする次世代SNSについて、SNS開発にも関わるエンジニアにご意見を聞いてみました。

リンクトイン(LinkedIn)がこれまでのSNSと大きく異なる点がいくつかあります。

まずはビジネスに特化しているという点です。ほかのSNSが友人同士でのプライベートなつながりを中心としているのとは対照的に、ビジネスマンが名刺を渡すかのように個々のプロフィールを交換しています。このため、ほかのSNSで多く現れる、取るに足りない内容の発信はほとんど見られません。

また、有料プランが段階的に設定されていることも注目すべき点のひとつです。無料の「Basic」で利用することも可能ですが、ほかの利用者を検索したい場合やメッセージを送りたい場合には、その件数によって「Business」「Business Plus」「Executive」といった有料のアカウントが用意されています。有料アカウントを利用することで探したい条件を満たす人物をスムーズに見つけることができますし、費用の面でも月間契約に比べて安価な年間契約が提供されています。

日本では「インターネットは匿名で利用するもの」というイメージがいまだに強いこともあり、SNSそのものの在り方にも検討が及んでいます。そういった状況の中リンクトイン(LinkedIn)が、これまでにない特徴的なSNSサービスとして話題になっています。個人が実名を登録するだけでなく、「ビジネス向け」「履歴書」といったキーワードに代表される、サービスの中で求人や商談を行ったり、専門家とコンタクトを取ることができる仕組みが特徴です。 専門分野に特化したSNSが日本でどの程度普及するのか、高い注目を集めているのです。

ここでは、あくまで開発者の視点から、クラウド時代の重要なキーワードである「マッシュアップ」と「ソーシャルグラフ」という観点で、これからのSNSの方向性を考えてみたいと思います。

「マッシュアップ」と「ソーシャルグラフ」というキーワードには共通点があります。それは、どちらも「点を線でつなぐ」ということです。マッシュアップは「サービス」という点を、ソーシャルグラフは「人」という点をつないでいます。

マッシュアップは複数のサービスを組み合わせて新しいサービスを生み出します。例えば、地図情報を提供しているサービスとレストラン情報を提供しているサービスを組み合わせることで、自分の現在地から近くにあるレストランを検索することが可能になっています。

一方、ソーシャルグラフは人のネットワークということができます。家族や友人といった現実のネットワークだけでなく、オンライン上だけでのつながりもあります。SNSの登場もあって、多くの若者が利用しています。

ここで注目すべきは、その手段と目的の関係です。
マッシュアップは手段であって目的ではありません。利用者にとっては、その技術に注目することはなく、そのサービスの内容に注目しています。つまり、マッシュアップは「その技術によって生み出される価値」を期待しています。
一方のソーシャルグラフでは「つながりそのもの」に期待しています。
人と人がつながっていることが大切なのです。これがマッシュアップとソーシャルグラフの違いだということができます。

マッシュアップにおける「AとBというサービスを組み合わせれば面白そう」といった感覚は開発者にとって重要ですが、それよりも重要なのがその先にあるものです。そのサービスが提供されれば、どんなことが実現されるのか。どう役に立つのか。開発者は常にその目的を意識していますし、今後もこの流れは続くと思われます。この視点が欠けていると利用者も増えないでしょう。

一方で、ソーシャルグラフではその技術に対する意識が希薄です。
友人同士のネットワークを築くこと、そのことが目的になっています。一部の諸外国では、不特定多数のネットワークに特定の行動を呼びかけるために使われることもあるようですが、積極的に手段としてソーシャルグラフを使う例はまだ日本ではほとんど見かけません。

では、この流れは今後も変わらないのか、ということを考えなければなりません。開発者は新しい提案としてソーシャルグラフを手段として利用価値を高めるという発想に挑戦してみるべきです。

ソーシャルグラフを構築することで何ができるのか、どう活用していくのか。特に「社会にとってプラス」になる使い方を意識した利用法にはこれまでにないやりがいもあるでしょう。

ソーシャルグラフが目的ではなく手段となったとき、普及の勢いは圧倒的な加速力を得ることが予想されます。その意味でリンクトイン(LinkedIn)はソーシャルグラフを手段として使うサービスとして、私たちに新たなインターネットの使い方を問いかけているといえるのではないでしょうか。』 <技術士(情報工学部門) 増井敏克:大阪府立大学大学院 理学系研究科 数理・情報科学専攻修了/工学院大学「セキュアシステム設計技術者の育成」プログラム修了>

「マッシュアップ」と「ソーシャルグラフ」を比較検討するところがエンジニアらしい観点だと思います。インターネット空間にすでに一定のリソースとして蓄積された「ソーシャルグラフ」を、どう活かすか、それもどのような目的性をもって“エンジニアリング”するか、という構想力が求められている、ということなのでしょうか。

「アメリカは日本で想像する以上にネットワーク(コネ)社会であり、就職活動も制度化されていないため、個人にとってこのようなコネクションは極めて重要な資産となる」『ウェブ×ソーシャル×アメリカ』・講談社現代新書・池田純一・p.144)「英語圏諸国は、ウェブを通じてバーチャルに国境を越えて人々を組織する手段を手に入れた」(同・p.256)などと捉えることもできるアメリカでのSNSの普及に比べて、これまでの日本での受容は少し性格を異にしているでしょう。しかし劇的なビジネス環境(市場環境や採用環境)の変化によって、そのニーズに後押しされるかたちでSNSの受容や利用様式がダイナミックに変わる可能性がリンクトインにはあるのかもしれません。

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【リンクトイン(LinkedIn)】

http://jp.linkedin.com/

「日本語サービスの開始で、日本人が持つ高いスキルや専門知識、経験を世界が活用できるようになる。重要な市場である日本で存在感を高めることは極めて重要だ」リンクトイン(LinkedIn)のジェフ・ワイナーCEOは、2011年10月20日に発表した日本語サービスに期待を込める。リンクトイン(LinkedIn)は米国ではビジネスコミュニケーションにおいてすでに重要なインフラとして活用されている。FacebookなどのSNSと異なり、仕事上のコネクション作りに特化しているのが大きな特徴。
米国ではプロフェッショナルの7割が既に参加しており、大企業の多くがスタッフの採用に活用するなど高い存在感を持っているだけに、日本での受容にも関心が高まっている。